タマネギ 苗立枯れ病
もうすぐ収穫の季節です
苗立ち枯れ病は、育てている作物が
タマネギの苗の時期に発生する病気です。
苗立ち枯れ病とはどのような病気でしょうか?
原因と対策についてもご紹介します。
[タマネギ 苗立ち枯れ病]
■苗立ち枯れ病の症状
「苗立ち枯れ病」という名前の通り
発芽してから1~2枚葉が出た苗に多く出る病気です。
立ち枯れ病になった苗は、
地表面近くの苗の部分が白く変色します。
変色した部分が柔らかくなり、くびれて倒れます。
葉身の1本だけが枯れることもありますが、
苗立ち枯れ病にかかった苗は症状が進むと、枯死します。
苗密度が高く、湿度が高い条件下では感染した苗の苗元付近に、
褐色で綿あめのようにふわふわした菌糸が見られることもあります。
過去、苗立ち枯れ病の発生した圃場(田畑)で栽培するときは、
感染することがある病気なので、予防後に播種や定植する必要があります。
■苗立ち枯れ病の原因
タマネギの苗立ち枯れ病の病原は、
リゾクトニア属 ソラニ(学名:Rhizoctonia solani Kuhn)の糸状菌が、
大部分を占めています。
タマネギの苗立ち枯れ病の病原は、
他にピシウム属(学名:Pythium )の糸状菌も原因になる場合もあります。
この苗立ち枯れ病はタマネギ特有の病気ではなく、
農作物全般で起こる病気です。
作物によって苗立ち枯れ病の病原菌の種類は異なりますが
苗立ち枯れ病を起こす病原は、日本全国に分布している菌類です。
また、同じ作物の苗立ち枯れ病に複数の病原菌が関わる場合や、
一種類の病原菌が複数の作物の苗立ち枯れ病を起こす場合もあります。
さて、リゾクトニア属 ソラニは、どんな特徴のかびなのでしょうか?
土壌の表面近くに生息しています。
地際部分の葉柄や胚軸、茎を枯らし、
苗立枯れ、茎腐れ、芽枯れ、株腐れ、尻腐れ症状を起こします。
このようなリゾクトニア属 ソラニを地表型の系統と呼びます。
ゾクトニア属 ソラニは、高温多湿が大好きです。
土表面が9℃以下では活動しませんが、
土表面近くが20℃になると潜伏期間が3日となり、短時間で蔓延します。
リゾクトニア属 ソラニは菌糸、厚膜化細胞、菌糸塊、菌核を作ります。
酸素が不足したり、9℃以下になると活動が弱まり、
数年ほど菌核の状態で休眠して生き延びますが、
休眠していないときは、新しい有機物だけから栄養を摂取して繁殖します。
今度はリゾクトニア属 ソラニを生育条件からみてみます。
リゾクトニア属 ソラニは、高温性菌の仲間です。
高温性菌とは、50℃以上でも活動できる菌のことを言います。
暖かい方が活発になる菌の仲間です。
リゾクトニア属 ソラニは、土表面が9℃以下では活動せず、
土表面近くが20℃になると潜伏期間が3日となることは前述しましたが、
この温度帯がポイントになります。
タマネギの育苗は、地下の生育適温が16℃前後のため
育苗を地温が20度近い時期に行うと、
苗立ち枯れ病にかかる危険があるというわけです。
このような特徴のある菌なので、
タマネギの立ち枯れ病の病原菌は消毒などの予防策を講じないと、
土壌中で生き残ってしまい、タマネギの育苗中に感染することがあります。
収穫前の倒伏のようす
■苗立ち枯れ病の対策
リゾクトニア属 ソラニの特徴や生育条件から、
苗立ち枯れ病の発生した畑や土を使った育苗を避けることが早道です。
苗立ち枯れ病の発生した土壌やその多能性のある土壌で育苗をする場合は、
育苗用の土を消毒してから播種し、予防に努めます。
施設やトンネルを利用した育苗をする場合は
多湿になりすぎないように、換気をすることも大切です。
◎感染したら
苗立ち枯れ病は発病すると、あっというまに感染が広まるので、
育苗床の状態をこまめに観察し、広まる前に防除します。
感染した場合、速やかに感染した苗を取り除き、
育苗施設や圃場の外に廃棄処分します。
感染源になるので、感染した苗を施設や畑に放置してはいけません。
感染した苗は、土中深くに埋めるか、焼却処分します。
◎効果的薬剤
効果的薬剤のお話の前に、
農薬を使うときに留意したいことを記しておきます。
農薬は、それぞれの農薬の使用方法に従い、
有効な作物に対し、適正な時期に適正な使用回数で、
適正な希釈倍数などを守って使用します。
また、使用期限を必ず守り、
使用期限までに使いきれずに残った農薬や空き容器は、
必ず専門の廃棄業者に引き取ってもらいます。
「農薬取締法」で検索するとより詳細が分かります。
では「苗立ち枯れ病に効果的な薬剤」に戻ります。
タマネギの苗立ち枯れ病の薬剤による防除は、
発生の極めて初期か予防散布に重点をおいて行います。
土壌消毒は、クロルピクリン錠剤、クロールピクリン、
バスアミド微粒剤、キルパー(リゾクトニア菌)などが良いです。
また、オーソサイド水和剤80で育苗時に薬液を散布したり
粉衣した種子を撒くのも有効です。
なお、病原菌の診断は非常に判断しにくい場合があります。
詳しくは、農協や公共の指導機関(たとえば地域の農業試験場)に、
相談されると間違いがない少ないでしょう。
薬剤による化学的防除をなるべく避けたい方は、
耕種的防除と最低限の薬剤防除を組み合わせた防除をお勧めします。
◎苗立ち枯れ病の耕種的防除
・春から夏にかけて、青刈り植物や未分解有機物を圃場にすき込むと、
病原菌の生育がよくなり、土中の菌糸密度が高くなるので、避けます。
・感染した株や苗は圃場に放置せず除去します。
除去した感染した株などは、土深くに埋没するか、焼却処分します。
・育苗床には健全土壌を使用します。
また、直播の場合は連作を避け、無病畑で栽培します。
・立ち枯れ病の病原菌がリゾクトニア属菌の場合は、
休作期に圃場を湛水処理して菌密度を低下させます。
・ハウスやトンネル、育苗施設では多湿を避けるために、
換気をし、病原菌の蔓延を抑える工夫をします。
・トウモロコシやイネ科の牧草等と2~3年輪作は、
病原菌の密度を減少させることに効果的です。
苗立ち枯れ病が出始めたら、すぐに薬剤防除も活用し、
被害を最小限度に食い止めるようにします。
■参考
・タマネギ 肥料過多
・タマネギ 肥料一発
・タマネギ 無機肥料
・タマネギ 有機肥料
・タマネギ 3月の肥料
・タマネギの収穫時期